原子力損害の賠償請求


東日本大震災による原発事故被災者支援弁護団
での電話相談員や、東京での相談担当者を
務めています。
私は、
交通事故、
医療過誤、
犯罪被害、
投資詐欺
等という、不法行為を原因とする損害賠償請求の委任を
多数受けています。
JCOによる臨界事故の際の損害賠償請求も
受任したことがあります。
多数の損害賠償請求を実施した立場から見て、
被害者多数の今の原発事故の損害賠償請求には、
若干の違和感があります。
1 損害額確定後の請求ではないこと、
2 請求可能額の回答を求められること
3 訴訟が提起されないこと
等の違和感があります。
多くの損害賠償請求は、やってみないと
損害額は分かりません。
交通事故の過失相殺、
風評被害の損害、
営業損害等は、いくらが
認められるかは、本来的には、やってみないと
分かりません。
これは、命、体、自由等の
本来は金銭で評価できないものを、
金銭で賠償しようとする制度に原因があるので、
永久に解決されないことだと思います。
そして、損賠償の歴史は、
戦いの歴史です。
高次脳機能障害等、分からなかった損害は、
徐々に認められるようになりました。
移転せざるを得なくなったための損害、
地域の活性が亡くなったための営業損害、
等、今まで余り考慮されてこなかった損害は、
多くの戦い(請求、提訴)と
政治(立法)も含めた対策がないと、
適切には賠償されないのでは、
と思います。
原発による損害を個別訴訟とADRで解決しようとする
制度は、関与する弁護士が増えますが、
果たして良い解決となるのか分かりません。
損害額の定額化
(訴訟をしても多くの場合それ以上取れないと思える額)
をする必要があると思います。
損害額の基準を決めるのは、政策的な問題です。
すると、損害額の基準の決定には、
ゲーム理論に通じた、ミクロ経済学者、又は法と経済の専門家が
関与するべきと思います。
現在の損害賠償基準の設定には、法と経済の視点がないのことは、
残念です。