借地権付建物の処分


使わなくなった借地権付建物の処分
使っていない借地権付建物は、お金が出ていくだけで、困りものです。
建物の取り壊し費用が数百万になることもあります。
しかし、買い手がいれば、法的処分は簡単です。
買い手が全くつかない場合は、相続放棄も検討対象です。

速やかな処分が賢明
不動産会社から、借地権付建物を買い取ろうと思うのだけれど、地主とうまくいかない⼈がいる、という相談を⽉に数件、受けています。
最近では、権利関係が複雑なので、普通借地権の新規設定はまれです。しかし、昭和以前から使っている⼟地には、借地権付建物があるものも多くあります。
ところが、⾃宅や⼯場、商店等として使っていた借地権付建物も、使⽤者が年を取り、代替わりのころには、使わなくなることがあります。使わない借地権付建物でも、⼟地の固定資産税の数倍以上の地代や、近隣から苦情が出ないように適切に管理するには、建物管理費、修繕費が結構かかります。
使わなくなった不動産は早期に処分、という原則のとおり、借地権付建物も処分する必要がべきでしょう。

建物取壊しは⾼価
まず、使わなくなった借地権付建物について、建物を崩して、更地にして、⼟地を地主に返すことが考えられます。
しかし、建物壊し費⽤は、道付き等の条件次第ですが、⽊造でも坪当たり数万円程度はかかり、総額100万円以上になることが普通です。
また、国税庁のホームページで公開している相続税での⼟地評価の基準の路線価図には借地権割合と路線価が記載されていて、東京近郊では、路線価図による借地権評価は極めて⾼額です。⻑い間使ったとはいえ、国が⾼く評価する借地権を、ただで地主に返すことには、容易に納得できません。
なお、まれには、地主が明け渡し料を払うことがあります。

エンドユーザーへの譲渡は難しい

そうすると、借地権建物を誰かに譲渡するしかなくなります。
しかし、古くなって使わなくなった簡単に建て替えができない借地上の建物を⾃分で使⽤する譲受⼈(エンドユーザー)を⾒つけることは、簡単ではありません。
また、借地権の譲渡には、地主の承諾が必要ですが、地主と話すらできないこともあります。⼀般に、借地上の建物を担保に普通の⾦融機関から借り⼊れをする場合、地主からの担保借⼊の承諾書が必要ですので、地主と円滑でない場合、エンドユーザーに借地権付建物を買い取ってもらうことは、難しいでしょう。

借地権付建物買取業者

結局ところ、現実的解決としては、借地権付建物買取業者に買い取り依頼することになるでしょう。
ところが、借地権付建物買取業者は、買い取った不動産の⽴地等に応じて、若⼲建物に⼿を⼊れて貸し出す、地主と交渉して建て替えをして売る等の前提で、多くの場合⾃⼰資⾦で借地権付建物を買い取ります。このため、借地権買い取り業者の借地権付建物買取価格は、修理や建て替えという不動産を商品化するコストや、商品化できるかどうかのリスク、⾃⼰資⾦についての機会費⽤の分、路線価からの価格よりも⼤幅に安くなります。
ただし、他に⽅法がない場合、安い買取価格でも、取り壊し費⽤等でマイナスの負動産をプラスに変えるという意味はある場合があります。
なお、地主が借地権譲渡を承諾しない場合でも、訴訟に⽐較して容易な⼿続きで、裁判所の決定によって、譲渡承諾があったことにすることができます(借地借家法19条1項)。
借地権買取業者は、裁判所の決定による借地権譲渡でも、譲り受けを受け⼊れるところもあります。
借地権付建物は、持っているだけもお⾦がかかります。また、建物が古くなりすぎた場合、借地権消滅が認められることもあります。
このため、⾼齢になり⽣活環境が変わり、借地権付建物が不要になった場合、所有権の⼟地よりも処分が容易でないため、速やかな処分が賢明です。

相続放棄も対応策のことがある

なお、借地権付建物買取業者でさえ購⼊しない借地権付建物については、相続が間近であれば、相続放棄も検討対象です。この場合、借地権付建物買取業者でさえ購⼊しない借地権付建物の他に良い資産がある場合は、良い資産だけ⽣前贈与する、⼜は遺贈する等の⽅法を併⽤します。